
先日、大阪(伊丹)空港近くの
ビジネスホテルに滞在した時の実話です。
ホテルは翌朝のフライトに備えるためのもので、とりあえず寝られればいいと言う程度でしたので
インターネットで発掘した格安ホテルにしました。
ホテルの外観は格安ビジネスホテルの典型とでも言うべきもので、最初は真っ白だったコンクリートの壁が、長年風雨にさらされて黒いシミだらけになり、人通りが少ない
日暮れにはそれだけで幽霊屋敷のように見えてもおかしくはありません。
このホテルには旧館と新館がありましたが、予約が取れていたのは当然の如く旧館でした。
部屋は
4階の端の部屋で、窓からは通りから良く見えるようにか、無理やり支柱をつけて取り付けられているホテルの看板の裏しか見えません。
必要最低限のものは揃っていますが部屋は非常に狭く、スーツケースを床に置いていると歩く度に足がどこかにぶつかるほどです。
当初の雰囲気自体は悪いものではありませんでしたが、
1つ気になったことがありました。
それは、ユニットバスの
ドアの鍵穴にこじ開けられたような跡があることです。
この手の鍵は
内側からプッシュしてロック、ドアノブを内側から回すと自動的に解錠されるタイプです。
すなわち、ユニットバスの鍵は
内側に誰かいないと施錠されず、外から鍵をこじ開けようとすると言うことは内側に誰かがいる場合の確率が高いわけです。
とは言っても、鍵を押して外に出てからドアを閉める等、色んな可能性が考えられるわけですから、頭から余計な不安は押しやって翌朝の体調を万全にすることに集中しました。
就寝したのは恐らく夜中の12:00頃、翌朝は6:00起床ですから十分な睡眠時間でしょう。
ろくに夢も見ないで眠りに落ちて行きましたが、しばらくして
頭の後ろから壁をドンドン叩く音がしてきました。
音の方に集中すると、なにやら
ひそひそ話す声もしています。
半ば眠りながらのことでしたが、
重要なことに気が付きました。
この部屋は4階の端の部屋で、ベッドのレイアウトからすると
寝ている頭の向こうには部屋はありません。
相変わらず不定期に壁をドンドンと叩くような音が聞こえていますが、確かに壁しかないはずの方から聞こえてきます。
ちょっと気味が悪くなり、無理やり寝てしまおうと気にしないように努力しましたが、しばらくして、
ひそひそ話をする声がユニットバスの中からと思えるような距離から聞こえ始めました。
心地良いはずの眠りが何処へやら、血圧は一気に上昇して眠気は吹き飛んでしまいました。
それでもこのまま眠りに再び落ちれればと思い、目は閉じたままでしたが、しばらくすると
煙草の匂いが漂い始めました。
実は
この階にある部屋は全て禁煙で、煙草の匂いがすると言うことは誰かが部屋の前で煙草を吸うこと以外に考えられないのですが、こんな夜中にしかも禁煙の部屋しかない階で更に一番端の部屋の前に来て煙草を吸うなどと言うのは非常に確率の低いことのように思えます。
ここで耐えきれずに目を開け、ベッドに座った状態で照明を点け、辺りの状況をしばらく伺っていましたが、
煙草の匂いはユニットバスの方へ向くときつくなり、気は進みませんでしたが、
ユニットバスの中を確認する必要があると思うようになってきました。
時計を確認すると、
午前2:53。
ベッドから立ち上がり、ユニットバスのドアを開けようと
ドアノブを回しましたが...ドアノブが回りません。
どうやら
鍵がかかっているようです。
当然、寝る前に使った時は問題なく開閉できて、しかも施錠してドアを閉めると言った凡ミスは犯していません。
意味不明にガチャガチャとドアノブを回しましたがやはりドアは開きません。
煙草の匂いは部屋の中に充満しており、
部屋の中もしくはユニットバスの中で誰かが煙草を吸っている感覚そのものです。
さすがに気味が悪くなり、部屋を飛び出そうかとも思いましたが、何もしないまま時間だけが過ぎて行きました。
すると突然、ベッドの脇ある
アラームが午前3:00を指して鳴り出しました。
疲れていたのでホテル備え付けのアラームを確認せず寝てしまったようです。
びっくりしてベッドに戻り、アラームを消して...さっきまで
充満していた煙草の匂いが嘘のように消えています。
壁の向こうの騒音も、ひそひそ話す声も聞こえてきません。
まるで夕立ちが過ぎ、全ての物がまた活動を始める直前の静寂、雨がどんよりした空気を洗い流し、浄化された空気が辺り一面に立ち込めているようです。
もしやと思い、ユニットバスのドアを開けてみると...これも
何事もなかったかのように開閉できます。
煙草の匂いもありません。
狐につままれたような感じでしたが、耳を澄ますとホテルの同じ階に設置してある自動販売機から出る、冷凍機のブーンと言う音が聞こえ、この階全体が普通の夜を取り戻したと言う実感が湧いてきました。
翌朝、結局睡眠不足のままホテルを経つことになりましたが、フロントの係に宿泊していた部屋について尋ねたところ、しばし考えた末、
就職して間もないから分からないと言う回答が返ってきました。
結局、
ドンドンと言う騒音が何なのか、話声の正体は何だったのか、煙草の匂いは何処から来て何処に消えたのか等、謎ばかりが残りましたが、今から思うと、
誰かがわざとアラームを午前3:00にセットし、怪現象が止むようにしていたのではないかと思えます。
もし、
大阪(伊丹)空港周辺で格安ホテルに宿泊する際は注意して下さい。